Azure Machine Learningで始めるモデルライフサイクル管理(MLOps)入門

AIモデルの開発は、学習して終わりではない。実運用に耐えるモデルを維持するには、データの更新、再学習、デプロイ、監視を継続的に行う必要がある。
この「モデルライフサイクル全体を管理する仕組み」が MLOps(Machine Learning Operations) だ。
Azure Machine Learning(以下、Azure ML)は、このMLOpsをクラウド上で実現するための機能を一通り備えている。この記事では、実際の開発・運用手順に即して、Azure MLを使ったMLOpsの構築プロセスを紹介する。


1. Azure Machine Learningの役割と構成

Azure MLは、学習環境・モデル管理・パイプライン実行・デプロイを統合したプラットフォームだ。
開発者がローカルやJupyter Notebookで試したモデルを、最小限の変更で本番環境に移行できるよう設計されている。

中心となるのは以下の要素である:

  • ワークスペース(Workspace):実験・データセット・モデル・ジョブを一元管理する単位。
  • コンピュート(Compute Cluster / Instance):トレーニングや推論を実行する計算リソース。
  • データストア(Datastore):Azure Blob StorageやData Lakeを接続し、学習データを管理。
  • MLflow統合:実験結果やモデルのバージョンを自動的に記録。

これらを使うことで、チーム全体で「いつ・誰が・どのモデルを・どんな条件で学習したか」を可視化できる。


2. モデル開発から本番運用までの流れ

ステップ① データ準備と実験追跡

まず、Azure MLのデータストアに学習データを登録する。
例として、Blob Storage上のCSVを「Dataset」として登録し、Notebook上でロードする:

from azureml.core import Dataset, Workspace

ws = Workspace.from_config()
dataset = Dataset.File.from_files(path=(ws.datastores['workspaceblobstore'], 'data/train/*.csv'))
df = dataset.to_pandas_dataframe()

その後、MLflowを使って実験結果を自動記録する。

import mlflow
mlflow.start_run()
mlflow.log_param("model", "RandomForest")
mlflow.log_metric("accuracy", 0.923)
mlflow.end_run()

これにより、異なる実験パターンを履歴として比較できる。


ステップ② トレーニングの自動化

本番運用を意識するなら、トレーニングをスクリプト化し、Azure MLジョブとして実行するのが基本だ。
学習用Pythonスクリプト(例:train.py)を用意し、次のようにジョブを送信する。

from azureml.core import ScriptRunConfig, Experiment, Environment

env = Environment.from_conda_specification(name='train-env', file_path='env.yml')
src = ScriptRunConfig(source_directory='.', script='train.py', environment=env)
exp = Experiment(workspace=ws, name='train-job')
run = exp.submit(src)
run.wait_for_completion(show_output=True)

これにより、GPUクラスタ上でトレーニングを自動実行でき、実行ログやモデル成果物がAzure ML上に保存される。


ステップ③ モデル登録とデプロイ

学習が完了したら、成果物を「モデル」としてAzure MLに登録する。

from azureml.core import Model
model = Model.register(workspace=ws, model_path='outputs/model.pkl', model_name='sales_forecast_model')

その後、WebサービスとしてAPI化する。
Azure MLは、AKS(Azure Kubernetes Service)またはACI(Azure Container Instances)へのデプロイをサポートしている。

from azureml.core.webservice import AciWebservice, Webservice
from azureml.core.model import InferenceConfig

inference_config = InferenceConfig(entry_script="score.py", environment=env)
deployment_config = AciWebservice.deploy_configuration(cpu_cores=2, memory_gb=4)
service = Model.deploy(workspace=ws, name="forecast-api", models=[model],
                       inference_config=inference_config, deployment_config=deployment_config)
service.wait_for_deployment(show_output=True)

これで、https://<service>.azurewebsites.net/score にHTTPリクエストを送るだけで推論結果を得られる。


3. 継続運用と自動再学習

実運用では、モデルの精度が時間とともに劣化する「モデルドリフト」への対応が欠かせない。
Azure MLには、再学習や評価をスケジュール実行できる「Pipeline」や「Scheduled Job」機能がある。

例えば、毎週新しいデータで再学習し、精度が一定以下なら自動的に本番モデルを更新するフローを構築できる。
このとき、Azure Monitorと連携してメトリクスを可視化することで、異常検知や通知も自動化できる。

また、GitHub ActionsやAzure DevOpsと連携させれば、CI/CDパイプライン内でモデルのトレーニング・テスト・デプロイを一括管理できる。
これはいわば「AIの自動ビルド&リリース基盤」であり、コード更新=モデル更新という開発文化を実現する。


4. 現場での導入ポイント

  • 最初は1ジョブ1モデルから始める:複雑なパイプラインを最初から組むと保守コストが膨らむ。
  • データとコードを同時にバージョン管理:成果物の再現性を保つ鍵になる。
  • 評価指標を明確に定義する:精度以外に「再学習コスト」「応答時間」なども考慮すべき。
  • 権限・コスト設計を初期段階で行う:チーム利用ではロールとリソース上限を設定する。

5. まとめ

Azure Machine Learningを使えば、MLOpsをゼロから構築する負担を大幅に減らせる。
モデルの開発・トレーニング・デプロイ・監視を一元化し、数クリックまたはスクリプト1本で再学習まで自動化できる。
AIを「作る」から「育てる」フェーズに進むには、まずAzure ML上で小さなパイプラインを動かしてみるのが良いだろう。
それが継続的なAI運用への第一歩となる。


参考リンク

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